ワキガは加齢臭と並ぶ、代表的な体臭の一つ。
その独特のニオイで周囲の人たちに不快感を与えてしまいます。
それだけに、自分がニオイを発しているのではないかと考えると、人と接するのにも気をつかってしまいますよね。
日本人は元々体臭の少ない民族であるため、ニオイに対して敏感でした。
あの万葉集にもワキガの廷臣(ていしん)をからかう歌があったほど。
また、江戸時代の街並みを描いた絵巻の中にはワキガ治療専門店が登場しています。
ワキガは昔から日本人にとって大きな悩みの種であったのでしょう。
しかし、人間は生きている限り体の細胞からなんらかのニオイを発しています。
完全な無臭ということはありえません。
この記事では自分がワキガだと思って悩んでいる人やワキガかもしれないけど確証が持てない人のために、ワキガの原因や症状、対策、チェック方法をお伝えします。
ワキガは病気ではない
「ワキガ」と聞くと、健康でない人がかかる病気のようなものだと感じる人がいるかもしれません。
しかし、ワキガの原因は病気ではなく「体質」です。
医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれています。
まずはワキガの特徴やニオイなどについて確認しましょう。
ワキガの発生原因
ワキガのニオイの原因は、脇の下から分泌される汗にあります。
そのメカニズムを詳しく確認しましょう。
ワキガに関係する汗の種類
汗は主に2つの種類があります。
ひとつは「エクリン腺」と呼ばれる汗腺から分泌されるもの。
もうひとつはワキガの原因である「アポクリン腺」という汗腺から分泌されるものです。
エクリン腺は体全体に分布しており、運動したときや暑いときに体温調整のために汗を分泌します。
その汗は透明でサラリと粘り気がないのが特徴です。
一般的に「汗」といえば、このエクリン腺から分泌されるものを指します。
一方、アポクリン腺は脇の下や耳の中、陰部、乳首の周り、肛門の周りなど特定の部位のみに分布しています。
エクリン腺の汗とは違い体温に関係なく、精神的な緊張や性的刺激によって汗が分泌されるといわれています。
この汗には脂肪や鉄分などが含まれており、粘り気があるのが特徴。
色は乳白色で、衣服に付着すると黄バミの原因になります。
ワキガのニオイの原因となる汗ですが、アポクリン腺から分泌された直後はほぼ無臭です。
これが皮膚上に生存している常在菌と混ざり合い、常在菌が皮脂腺から分泌される皮脂などを分解することでニオイが発生します。
さらにエクリン腺の汗がアポクリン腺の汗を拡散させてニオイを強くしてしまうのです。
ワキガの体質はアポクリン腺の数によって決まります。
この数は生まれたときから決まっており増えることも減ることもありません。
ワキガのニオイが強くなる食べ物
ワキガは食生活と大きな関係があります。
ニオイを強くするのは動物性タンパク質や動物性脂肪を含む肉類や、チーズやバターなどの乳製品。
これらを多く摂取することでアポクリン腺や皮脂腺の働きが活発になりニオイを強めてしまうのです。
揚げ物など油の多い食べ物も要注意です。
皮下脂肪が増えることで同じように汗腺を刺激して汗をかきやすくしてしまいます。
このほか、韓国料理やエスニック料理など香辛料をたっぷり使った刺激の強い料理や、お酒なども汗腺を強く刺激します。
ワキガ対策を考えるなら、多く食べないほうがいいでしょう。
また、甘いものも中性脂肪の蓄積につながるため、ワキガを強める原因となってしまいます。
日本人のワキガ体質が少なかった要因のひとつは、魚や野菜を中心とした食生活を続けていたことです。
ところが、食生活の欧米化にともなって、ワキガ体質の増加傾向がみられるようになりました。
高カロリー、高タンパク質、高脂肪の食事はワキガを強める原因のひとつと言ってよいでしょう。
ワキガが遺伝する確率は?
ワキガ体質は遺伝するものです。
そもそも遺伝には「優性遺伝」と「劣性遺伝」があります。
優性遺伝の場合、両親のどちらかが特定の遺伝子を持っていると子どもに性質が引き継がれるもの。
一方の「劣性遺伝」の場合は、両親の両方が特定の遺伝子を持っていることで子どもには引き継がれるものです。
残念ながら、ワキガは遺伝しやすい「優性遺伝」。
両親のどちらかがワキガの場合は約50%、2人ともがワキガの場合は約80%という高確率で遺伝してしまいます。
ワキガの特徴や症状
ワキガはその名の通り脇から独特のニオイを発します。
日本人のワキガの割合は約10~15%程度といわれていますが、ニオイの種類や強弱は人によってさまざま。
重度の場合、ワキガの人が通ったあとにニオイが残ることがあります。
また、脇汗が服に黄バミをつけてしまうことも。
一般的に入浴やシャワー直後はさほど気にならないのですが、時間の経過と共に強くなっていくことが多いようです。
ストレスや性的刺激によっても強まることもあります。
ただ、ワキガ自体はその人の健康に直接害を及ぼすようなことはほぼありません。
ワキガであるかどうかを簡単に確認するには、耳垢の状態や脇毛の量を確認するといいでしょう。
耳垢が湿っていたり、ワキ毛が多かったりする場合は、アポクリン汗腺の量が多い可能性があります。
一度ワキガの可能性を考えてみる必要があるかもしれません。
詳しいセルフチェックの方法については、後ほど説明します。
ワキガと汗のニオイは違うもの
ワキガのニオイの原因は脇の下の汗です。
ただし、一般的にいわれる「汗臭い」とは異なります。
ワキガは鼻をつくような独特のニオイが特徴。
その種類は多種多様です。
「玉ねぎが腐ったようなニオイ」や「鉄さびのようなニオイ」、「鉛筆の芯のようなニオイ」と表現されることがあります。
ワキガと加齢臭の関係
加齢臭はワキガと並ぶ、不快なニオイの代表格です。
ワキガは文字通り脇から発生するもの。
加齢臭は頭部や耳の後ろ、首の後ろから発生しますが、脇からも発生します。
そのため、ワキガと加齢臭を同類のものと考えがちです。
しかし、ワキガと加齢臭はその原因が異なります。
ワキガの原因は、皮膚に存在する「アポクリン腺」という汗腺から分泌される汗です。
それに対して加齢臭の原因は「皮脂腺」から分泌される「ノネナール」という物質。
これは皮脂が酸化した過酸化脂質によって、皮脂腺の中の脂肪酸が酸化分解されることで発生するものです。
年を重ねるごとに体の中で酸化反応が起こりやすくなるため、ノネナールが増加してニオイが強くなるといわれています。
ワキガと加齢臭では年齢的なピークも異なります。
一般的にワキガは10代~20代頃が最も強く、年齢を重ねるのとともに弱まっていくといわれています。
これに対して、加齢臭は主に40代前後に発生しはじめ、年齢を重ねるほど強くなる傾向があります。
ちなみに、加齢臭は男性だけでなく女性にも発生します。
しかし、女性は普段からニオイに対するケアをしていることや、女性ホルモンが加齢臭を抑えていることがあるためそのイメージが強くありません。
逆に、ホルモンバランスが崩れる出産直後や、女性ホルモンの分泌が減少する閉経前後は加齢臭が発生しやすいといわれています。
このように、ワキガと加齢臭の原因は別もので直接的には関係はありません。
しかし、共通点が一つあります。それは、どちらも皮脂が関係しているニオイだということです。
ワキガの原因はアポクリン腺から分泌される汗のほかに、実は皮脂腺から分泌される皮脂も関係しています。
そして、加齢臭の原因であるノネナールのおおもととなる物質も皮脂なのです。
皮脂の原料は、体内の脂肪分。
体質的にワキガや加齢臭が避けられない場合は、体の中に脂肪分を増やさないようにすることが予防策のひとつとなります。
適度な運動や脂の多い食べ物を控えることなどを心がけることが、ニオイの軽減に繋がるといえるのです。
デリケートゾーンも「ワキガ」になる
ワキガは脇の下以外に、乳首の周りや肛門の周り、へその周りでも発生する場合があります。
また、これ以外に陰部から強いニオイを発するケースも。
これを「すそワキガ」といいます。
医学的には「外陰部臭症」と呼ばれ、男性よりも女性の方が発生しやすいといわれています。
これは、おりものや月経などの影響で陰部周辺の湿度が高くなり、細菌が増殖しやすい環境を作ってしまうから。
おりものがニオイを発することもあるため、すそワキガとの区別がつきづらいのが問題です。
一般的におりものは、ヨーグルトや乳製品のような甘酸っぱいニオイにたとえられます。
一方、すそワキガはワキガと同じく多種多様なのですが、全体的に生臭いのが特徴です。
ただ、デリケートゾーンのニオイは婦人科系の病気が原因で発生することがあります。
急にニオイが強くなったり、おりものの量が増えたりした場合は、診察を受けることをおすすめします。
ワキガと年齢の関係 大人も子どももワキガになる
ワキガになるのは、主にホルモン分泌が盛んになる第二次性徴期である思春期ごろだといわれています。
かつては小学生ぐらいまでワキガになることはほとんどないと考えられていました。
ところが近年、子どもたちの早熟化の傾向が強まり、小学校低学年でも発生するケースが見受けられるようになっています。
発生時期は女性の方がやや早く、ホルモンバランスが崩れる月経周期に合わせてニオイが強まるようです。
また、一般的に多くはありませんが、大人になってから急にワキガになる場合があります。
これは、もともとワキガ体質の人が生活環境の変化などから体に影響を受けてしまうから。
その結果、汗腺が活発になりニオイを発するようになってしまうのです。
ワキガと耳垢の関係
ワキガと耳垢には大きな関係があります。
耳垢のタイプはカサカサと乾燥しているものと、生キャラメルのように湿ったものの2種類。
このうち、耳垢が乾燥しているタイプの人はワキガである可能性はほとんどありません。
逆に幼少期から耳垢が湿っているのであれば、ニオイを発生していなくてもワキガ体質であると考えて差し支えありません。
成人してから耳垢が湿ってきた場合は、ワキガではなく外耳炎などを発症している可能性が考えられます。
ちなみに、欧米人の約80%が耳垢の湿ったタイプ。
そして、そのほとんどがワキガ体質だといわれています。
一方、日本人は約23%が耳垢の湿ったタイプです。
ある調査によると、このタイプの人は東北地方および南九州から沖縄の人に多く、関西には少ないことがわかりました。
これはかつて日本にいた縄文人と弥生人の分布に一致しており、耳垢が湿ったタイプは弥生人が起源であるとも考えられています(※1)。
また、耳垢が湿っているかどうかは、遺伝とも関係があります。
両親のうち片方でも耳垢が湿っているタイプだとしたら、子どもはワキガ体質である可能性が高いと考えていいでしょう。
自分でできるワキガ予防と対策について
ワキガには自分で手軽にできる対策があります。
特に軽度の場合は、しっかり対策をおこなうことでニオイを大幅に軽減することが見込めます。
食生活を変えることで改善
ワキガは食生活によって強弱が変わります。
逆に言えば、食生活を改善することでワキガのニオイを抑えることができるということです。
元来、日本人のワキガ体質の割合は10%程度でした。
その理由は、日本人が主に魚や野菜を中心に食べてきたから。
一方、欧米人の約80%がワキガ体質であるといわれています。
肉類や乳製品を中心とした食生活を続けてきたことが原因です。
肉類や乳製品といった高タンパク、高カロリーの食事はアポクリン腺や皮脂腺を刺激し、ニオイの原因となる脂肪酸を増やします。
また、タンパク質が肝臓で分解されるときに熱エネルギーが発生し、汗をかきやすくしてしまうのです。
そうであれば、肉類を減らして、魚や野菜を中心とした低タンパク質、低脂肪といった淡泊な食生活を取り入れれば、ワキガの軽減につながります。
ただし、急に肉類などを一切絶つことはおすすめできません。
ストレスもワキガの原因になるので、極端に制限した食生活は逆にニオイを強めてしまう場合があります。
適度にバランスの良い食事を採ることが一番でしょう。
適度な運動でニオイを軽減
運動したときに体から出る汗は、体温調整のほかに体内の老廃物を排出する働きを持っています。
ところが、何日も汗をかかない状態が続くと汗腺機能が低下。
次に汗をかいたときに溜まっていた老廃物が一緒に排出してしまいます。
その結果、汗をかいた部位に細菌が繁殖しやすい状態になり、ニオイが悪化してしまうのです。
つまり、汗を気にするあまり体を動かさない対策は逆効果だということ。
適度な運動を心掛けましょう。
ストレス解消もポイントの一つ
ストレスはアポクリン腺に大きな影響を与え、発汗を促します。
ストレスが多い環境に長くいたり緊張状態が続いたりすると、脇の下は常に汗で湿った状態に。
細菌が増殖してワキガのニオイを強めてしまいます。
また、ワキガを過度に気にしたり、極端に食事を制限したりすると、ストレスをためてしまい逆にワキガが強まってしまうこともあるので注意しましょう。
薬用石鹸などで殺菌すればニオイは消える?
ワキガのニオイは常在菌が汗や皮脂を分解することで発生します。
つまり、細菌がいなければニオイは発生しないということです。
殺菌できる薬用石鹸や消毒用のエタノール水溶液、イソプロパノール水溶液を使うことで、短期的にはニオイを抑えることができます。
しかし、持続性に問題があります。
菌は一度殺しても再び脇の下に集まり増殖するからです。
ワキガの強弱にもよりますが、早い人は殺菌してから1時間もしないうちに再びニオイが発生してしまうといわれています。
また、皮膚に住み着いている常在菌は、人体にとってほぼ無害です。
むしろ体に悪影響を及ぼす雑菌を抑制するなど、皮膚を清潔に保つために必要な菌も存在します。
ですから、むやみな殺菌は得策ではありません。
そうでなくても、脇の下はデリケートな部分。
殺菌剤の刺激によって、皮膚炎や乾皮症を起こしてしまう可能性もあるので注意が必要です。
制汗剤などのデオドラント商品に効果はある?
デオドラント製品は手軽にワキガ対策をおこなえるアイテムです。
制汗スプレーや制汗クリームなどの制汗剤は、読んで字のごとく汗の分泌を抑える薬剤。
毛細血管の先端を収縮させて汗腺の活動を弱める効果が期待できます。
汗腺自体にフタをして汗を体外に出さないようにしてしまうイメージです。
抗菌殺菌、消臭効果のある成分が含まれているものもあります。
デオドラントスプレーやクリームは、ニオイの原因である汗自体を抑えるので一定の効果を期待できます。
しかし、その効果はあくまでで一時的なもの。
夏場などは数時間で効果が薄れてしまうことがあるので、定期的な使用が必要です。
ただし、過度な使用は禁物。汗は体温調整のほかに、体の中の老廃物を排出する機能を持っているといわれています。
制汗剤で汗腺を塞ぎ続けてしまうと毛穴が詰まって老廃物がたまり、毛穴の黒ずみが発生する恐れがあるのです。
さらに、殺菌効果がある製品の場合は、常在菌が減ることで雑菌を抑えることができなくなり、逆にニオイが悪化してしまう悪循環に陥る危険性があります。
制汗剤はニオイそのものを消すわけではありません。
使い過ぎには注意しましょう。
脇汗シートと脇汗カバーの違いと効果
ワキガのニオイは、主に汗で濡れた服から発散されることで他人に伝わります。
汗で濡れた服は高温多湿で地肌よりも細菌が増殖しやすいため、強いニオイを発してしまうのです。
ですから、脇汗シートや脇汗カバーは、ニオイ対策に有効です。もちろん、服の黄バミ防止にもつながります。
ただ、脇汗シートと脇汗カバーには違いがあります。
脇汗シートは薄いシール状のもので直接、脇の下に貼り付けるもの。
透明タイプのものもあるので、使用していることを知られにくいのがメリットです。
ただし、1枚のシートではわき全体を覆えない場合や、汗が多くて剥がれてしまうことがあります。
また、肌が弱い人は肌荒れやかぶれなどに注意が必要です。
脇汗カバーは衣服に貼り付けるタイプのもので、脇汗シートよりもサイズが大きいのが特徴です。
ただし、脇を上げた時に脇汗シートが見えてしまったり、薄手の服から透けて見えたりすることがあります。
自分の汗の量や肌の強さ、使用するシーンなどによって使い分けると快適に脇汗ケアができるでしょう。
ワキガを治療できる病院やクリニック
重度のワキガの人や自分がワキガかどうかの判断が難しい人は専門の病院やクリニックを受診することをおすすめします。
そうだとはいえ、病院にいくのはちょっと不安……。
どのような治療内容でどれぐらいの費用がかかるのでしょうか。
ワキガを治療できるのは何科?
ワキガの治療は主に形成外科で行われています。
皮膚科や美容外科、美容形成外科などでも治療することができます。
美容外科や美容形成外科には、ワキガ専門のクリニックもありますが、自由診療のみで保険適用外ということが多いので事前に確認しておくといいでしょう。
また、形成外科や専門のクリニック以外は、専門医がいない場合があります。こちらも事前に確認しましょう。
女性の方で「すそワキガ」に悩んでいる場合は、まずは婦人科や産婦人科に相談するのがおすすめ。
「すそワキガ」と診断されたら、整形外科、皮膚科美容外科、美容形成外科などで治療を受ける流れになります。
ワキガの手術
ワキガを根本的に治したい場合は手術が必要です。
基本的には入院不要で大きな効果が期待できますが、メリットとデメリットがあります。
剪除法(せんじょほう)
ワキガ手術の中で最も一般的な治療方法。
多くの形成外科でこの手術が行われています。
皮膚を3~5センチ程、切開したあとに皮膚を裏返してアポクリン腺を目視で確認しながら一つずつ丁寧にハサミで除去していきます。
メリットは目視で除去していくため治療効果も高いこと。
健康保険が適用されるため費用も安く抑えられます。
デメリットは術後のダウンタイム(回復時間)が長く、安静が求められることです。
また、大きな傷跡が1~2本程残り目立ってしまいます。
超音波吸引法
皮膚を5ミリ程切開したあとに器具を挿入し、超音波の波動で器具先端の金属チップを振動させて汗腺を破壊しながら吸引していきます。
メリットは傷跡が小さく目立たないことです。
乳首の周りや陰部なども対応できます。
ダウンタイムが比較的短いのも特徴です。
デメリットは技術的に難しく破壊しきれなかった汗腺が復活して再発してしまうケースがあること。
保険適用対象ですが自由診療として扱っているクリニックが多くあります。
イナバ式組織除去法
ローラーと刃が合わさった特殊なハサミのような器具を使用する方法です。
皮膚を3~5センチ程、切開したあとに皮膚の外側からローラーで押し、もう片方の刃の部分を挿入して内部の汗腺類をそぎ取っていきます。
メリットは治療効果が高いことです。
皮膚の内部の厚さ1ミリ程まで均一にきれいにそぎ取る方法であることがその理由。
一方、皮下組織を薄く削りとるため、脇の下に色素沈着が起きてしまうケースが多いのがデメリットです。
また、汗腺を目視で確認できないため、医師の技量によって取り残しが起きる可能性があります。
自由診療のため保険が適用されない点にも注意が必要です。
クアドラカット法
皮膚に4~5ミリ程、切開したあとに高速回転式の刃がついた器具を挿入して汗腺類を削りながら吸引していきます。
メリットはメスで大きく切開する必要がない分、体への負担が少なく傷跡もほとんど目立たないことです。
デメリットはイナバ式組織除去法と同じく、直接内部を目視しないため汗腺の取り残しが発生する可能性があること。
また、術後は一定のダウンタイム(回復時間)が必要になります。
こちらも自由診療のため、保険は適用されません。
汗腺は一度取り除けば再生することはないので、手術すれば半永久的に効果が続きます。
ただし、汗腺は思春期に発達するもの。
子どものうちに手術を受けてもその後に再発してしまうことがあります。
実際に手術を受けるかどうかは医師とよく話し合ったうえで決めましょう。
手術以外の治療方法
ワキガの治療は手術以外でもおこなうことができます。
ミラドライ
皮膚の上からマイクロ波を照査して汗腺を熱で破壊する治療法です。
メリットはメスを入れないためダウンタイムが短いことと、傷跡が残らないことです。
デメリットは一時的な副作用として治療箇所の腫れや痛み、腕や胴の痺れなどが起こる可能性があることです。
やはり、保険は適用されません。
ボトックス注入法
ボトックス注射をしてエクリン腺の働きを弱めます。
エクリン腺の汗はワキガのニオイを発散させる効果があるため、この注射を打つことでニオイの軽減につながります。
メリットは傷跡が残らないことと治療時間が5~10分程と短いこと。
そして、ダウンタイムがないことです。
一方、アポクリン腺に影響がないため、強度のワキガには効果が薄いケースがあるのがデメリット。
また、4~6か月程度しか効果が持続しないので、定期的に治療を行う必要があります。
こちらは、健康保険適用対象です。
治療にかかる費用
医療機関でワキガの治療を受けるときに気になるのは、保険が適用されるかということではないでしょうか。
保険を適用して治療するには三つの条件があります。
一つめは健康保険に対応している病院、クリニックで受診することです。
前提として、保険適用できる手術や治療法を行える病院を選ぶ必要があります。
特に美容外科などのクリニックでは自由診療のみ対応していることが多く、全額自己負担になってしまうことがあるので注意しましょう。
二つめは医師からワキガと診断されることです。
ワキガは数値などで判定ができないため医師個人の判断基準で診断が下されます。
デオドラント剤などでニオイを抑えたまま受診するのはやめましょう。
また、黄バミのついた服は大切な判断材料となります。持参することをおすすめします。
三つめは保険が適用される治療を受けることです。
現在、厚生労働省に承認されている保険適用対象の手術は「剪除法」と「超音波吸引法」の2つしかありません。
それ以外の手術は自由診療のため高額な費用がかかります。
各治療方法の平均的な費用は以下を参考にしてください。
・剪除法:約4~5万円(保険適用3割負担の場合)
・超音波吸引法:約5~8万円(保険適用3割負担の場合)
・クアドラカット法:約30~40万円
・イナバ式組織除去法:約30~45万円
・ミラドライ:約30~40万円
・ボトックス注射:約3~5万円(保険適用3割負担の場合)
手術での治療と同じくメリットやデメリットを理解したうえ、医師とよく相談して治療法を決めましょう。
「もしかしてワキガ!?」と悩んだら 簡単なセルフチェック法
ワキガは自分では気づきづらいものです。
また、脇のニオイに悩んでも実際にはワキでないケースもあります。
これから紹介するセルフチェックで、ワキガ体質が疑われる場合はそれぞれ自分に合った対策を取ってみましょう。
耳垢が湿っている
耳垢が生キャラメル状に湿った状態の場合は、ワキガ体質であることにほぼ間違いありません。
その原因は耳の中にあるアポクリン腺から分泌される汗。アポクリン腺の数が多いとその分、耳垢が湿ってしまうというわけです。
逆に耳垢が乾燥している場合は、ワキガ体質の可能性はほとんどありません。
両親のどちらかがワキガである
両親のどちらかがワキガの場合は約50%、両親の両方がワキガの場合は約80%の確率で遺伝します。
両親のニオイに気づきづらい場合は、耳垢が湿っていないか確認してみるといいでしょう。
衣服のわきの下に黄バミがある
衣服の脇の下にできる黄ばみは、アポクリン腺から分泌された汗によって起きている可能性が考えられます。
汗には脂肪や鉄分、アンモニアなどが含まれており、これらが黄ばみにつながるのです。
ただし、制汗剤を使っている場合はその成分によって黄ばみになってしまうことがあります。
ワキガの症状なのか、あるいは制汗剤の影響なのかを、冷静に確認しましょう。
わき毛や陰毛に白い粉がついている
制汗剤などを使っていないのに、脇毛や陰毛に白い粉のような結晶がついている場合はワキガの可能性を疑ってみましょう。
白い粉はアポクリン腺からの分泌物が結晶化したものだと考えられています。
わき毛が太い、毛深い、やわらかい
ワキガの原因であるアポクリン腺が多いとわき毛の数が増えます。
その分だけわきの分泌物が毛に付着しやすくなるため、細菌の繁殖によってワキガが強まるのです。
またワキガの場合、男性は細くてやわらかい毛が生え、女性は太い毛が生える傾向があります。
わき毛にこうした特徴がないかチェックしてみるといいでしょう。
まとめ
ここまで紹介してきたとおりワキガは生まれ持った体質です。
決してあなたが悪いわけではありません。
まずは行動に移すことが大切。「自分はワキガかもしれない」と思ったら、思い悩む前に医師に相談しましょう。